脳卒中危険度予測ツール(保健・医療関係者向け)
■脳卒中危険度予測ツールとは?
茨城県では独自に、基本健康診査の受診者約9万6千人の方を15年間にわたり追跡して、健診成績と脳卒中などの生活習慣病による死亡との関連を調査しました。その疫学調査の結果をもとに作られたのがこのツールです。
これまで、健康診断を受けて、ご自分の結果が異常値であることはわかっても、それが将来の健康にどのくらい影響を及ぼすかは、意外とわかりにくかったと思います。
このツールを使っていただければ、自分が将来、がんや脳卒中、虚血性心疾患(心筋梗塞)などの循環器疾患などにかかったり、死亡したりする危険度(リスク)がどのくらいあるかがわかります。
また、生活習慣の改善などにより検査結果が良くなった場合を想定して、「改善値」を入力することにより、改善後の危険度(リスク)も表示されます。
注意!
このツールは40〜79歳までの住民で健診を受診された比較的健康な方の疫学調査結果に基づいて作成されたものであり、ここに表示される値や危険度などが、病気を持っている方などにあてはまるとは限りません。
目次
- 機能説明
- 使用上の注意
- 操作例
【事例1】血圧、血糖値が高く喫煙習慣あり、飲酒3合以上のある65歳男性の場合
【事例2】血圧が高く、中性脂肪がやや高め、喫煙習慣がある56歳女性の場合
- 補足事項
・グラフの種類
・発症率
・表示の切り替え
・影響する項目について
・「望ましい値」と「あなたの値」の関係について
・入力の方法
・オプション
・リスト
・印刷
・エクセルマクロとセキュリティ
- 脳卒中危険度予測ツール用語等の解説
- 脳卒中危険度予測ツールダウンロードの方法
- 脳卒中危険度予測ツール作成方法
- 保健指導のためのQ&A
- 脳卒中危険度予測ツール作成検討委員会メンバー
- 脳卒中危険度予測ツール使用の手引き
機能説明画像はこちら(PDF:152KB)
- 左上の5年予測、10年予測、15年予測を選択し、個人の値を「あなたの値」欄に入力すると、疾患ごとの5年,10年および15年以内の死亡率及び発症率が、棒グラフとして表示されます。
- 疾患の切り換えは右上の「グラフ表示」で行います。
「すべて」、「脳卒中」、「虚血性心疾患」、「循環器疾患」、「がん」、「全死亡」の中から見たいグラフを選択してください。「すべて」を選択すると、「脳卒中」から「全死亡」までの5つのグラフが同時に表示されます。
- グラフ表示を疾患別にすると、その死亡・発症に影響する検査項目欄が黄色く示されます。また「あなたの値」が「望ましい値」から外れる場合には、「あなたの値」の欄がオレンジ色に変わります。
- 「あなたの値」との比較のため、「県民の平均値」と「望ましい値」が示されます。
- 「あなたの値を確定」ボタンを押すことで、「あなたの値」を固定し、新たに「改善値」の項目を入力して、死亡・発症の変化を見ることができます。
- 推定値は、40〜79歳のデータに基づいていますので、39歳以下もしくは80歳以上では正確に推定されない可能性があります。
- 「脳卒中」および「虚血性心疾患」については、発症率の分析も行っています。ただし、死亡率と比較すると参照したデータ数が少ないため、おおよその目安として利用してください。
- このソフトは、Microsoft Excelがインストールされているコンピュータで利用可能です。バージョンにつきましては、Excel2000、Excel2002、Excel2003、Excel2007、Excel2010(ただし、マクロをON)での動作確認をしております。それ以前のバージョンのExcelでは、正常に動作しません。
【事例1】
- 血圧、血糖値が高く喫煙習慣あり、飲酒3合以上のある65歳男性の場合
【画面1】(PDF:138KB)
【画面2】(PDF:139KB)
【画面3】(PDF:122KB)
【事例2】
- 血圧が高く、中性脂肪がやや高め、喫煙習慣がある56歳女性の場合
【画面4】(PDF:133KB)
【画面5】(PDF:138KB)
【画面6】(PDF:110KB)
- 死亡率
5年、10年、15年以内に該当する疾患(病気)で死亡する確率(%)です。
- 発症率
5年、10年、15年以内に該当する疾患(病気)が発症する確率(%)です。
- 県民の平均値
茨城県民の平成5年度の基本健康診査受診者の健診結果から算出した平均値です。男女別、年齢階層別(5歳きざみ)など細かく分析しています。なお、40歳未満は40歳〜44歳の平均値を、80歳以上は75〜79歳の平均値を使用しております。
- 望ましい値
一般的には医療機関等の基準値を参考にしますが、このツールでの望ましい値とは、上記茨城県民の疫学調査の結果による値で、各該当者の年齢で死亡率が最も低い値です。
- BMI
身長に見合った標準体重の求め方はいろいろありますが、このツールではBMI(Body Mass index)という体格指数を使用します。
算出のしかた : BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
- 死亡率が低く表示された場合、安心であると判断してよいか
1つの目安としてご判断ください。このグラフのねらいは、「望ましい値」と比較することにあります。「改善値」の項目を入力し、生活習慣を改善した場合の死亡率の変化を参考により良い生活習慣への改善に取り組む事をねらいとしております。
- 肥満であり高血圧の方が、「改善値」として減量後の体重を入力した場合、血圧も降下するのでしょうか
入力項目(検査項目)は、各項目が単独に設定してありますので、連動することはありません。従って、項目ごとに改善値を入力することが必要です。
茨城県では独自に、基本健康診査の受診者約9万6千人の生命予後を15年間にわたり追跡する調査を実施しました。
このツールは、この調査結果をもとに開発したソフトで、個人の健診結果を入力することにより、健診後5年間、10年間、15年間に脳卒中やがんなどの生活習慣病で死亡する危険がどの程度なのかを算出するソフトウェアです。
ここで示される結果は、あくまでも生活習慣病改善の参考情報ですので、あなた自身の生活習慣改善の糸口としてご利用下さい。
なお、このツールに関するプログラム並びに商業目的の無断使用を禁止します。また使用料は無料ですが著作権は茨城県に帰属します。
操作手引書及びQ&Aの内容を確認してから「脳卒中危険度予測ツール」をダウンロードしてください。
このソフトは、Microsoft Excelがインストールされているコンピュータで利用可能です。バージョンつきましては、Excel2000、Excel2002、Excel2003、Excel2007、Excel2010(ただし、マクロをON)での動作確認をしております。それ以前のバージョンのエクセルでは,正常に動作しません。
脳卒中危険度予測ツール(エクセル:582KB)
解凍方法:脳卒中危険度予測ツール(保健・医療関係者向け)
ダウンロードしたファイルをダブルクリックしてください。解凍したツールが動作しない場合は下記を参照してください。
脳卒中危険度予測ツール作成方法はこちらからダウンロードしてください。(PDF:185KB)
- Q1.【肥満、BMI高値】
- 60歳代男性。身長156cm、体重64kgでBMI26.3と肥満傾向があります。最高血圧や血糖値は正常範囲です。改善値で、体重を下げ、BMI22程度にしても、死亡率は低下しませんが、減量するよう指導はしなくてよいのでしょうか。
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- A1.
- このツールでは、疫学調査の結果に基づいて、BMIが23から27の間にある人が最も死亡率が低くなるように設定されています。BMI22を標準、25以上を肥満とする基準に比べ、理想値がやや肥満側にあります。BMIが30以上でも、死亡率はあまり上昇しません(これは、今回の疫学調査の対象者の中に、重度の肥満の人が少なかったためとも考えられます)。逆に、BMIが20以下になると、死亡率がむしろ上昇します。
血圧や血糖値など肥満と関連のある検査値に異常がない場合は、強く減量を勧めなくてもよいと考えられます。
なお、この事例では、禁煙と節酒により、死亡率が低下します。
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- A1 事例画像はこちらからご覧ください(PDF:131KB)
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- Q2.【肥満、BMI高値】
- 60歳代男性。身長167cm、体重72kgでBMI25.8と肥満傾向があります。最高血圧は156mmHg、空腹時血糖184mg/dlと高値です。HDLコレステロール33mg/dlと低値です。改善値で、体重を減らしBMIを22程度に下げても死亡率に変化はありませんが、減量の必要はないのでしょうか?
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- A2.
- 空腹時血糖184mg/dlから、糖尿病が強く疑われ、最高血圧156mmHgも軽症高血圧のレベルにあり、医療機関で精査治療が必要です。体重管理は医療機関の指示に従ってください。
なお、ツール上では、BMIを下げても死亡率に変化はありませんが、実際の症例では、BMI低下に伴い、血糖値や血圧も低下して、それが死亡率の低下につながることが予想されます。また、HDLコレステロールは、禁煙、運動、魚摂取のほか、肥満の是正によっても改善することが知られています。このツールは、複数の検査値が互いに連動して変化するようには設計されていませんので、その点をご理解ください。
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- A2 事例画像はこちらからご覧ください(PDF:138KB)
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- Q3.【高血圧】
- 40歳代女性。最高血圧が150mmHgとやや高いので、下げた方がよいと思いますが、改善値で100mmHg以下になっても、さらに下げれば下げるほど死亡率が低くなります。最高血圧は、どの程度まで下げるのがよいのでしょうか。
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- A3.
- 日本高血圧学会のガイドラインでは、至適血圧は最大血圧で120mmHg未満、正常血圧は最大血圧で130mmHg未満とされていますので、その程度を目標に下げれば十分です。ツール上は100mmHg以下にするとさらに死亡率が下がりますが、そこまで下げる必要はありません。
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- A3 事例画像はこちらからご覧ください(PDF:138KB)
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Q4.【尿蛋白】
- 40歳代の男性。最高血圧154mmHgとやや高く、尿蛋白が陽性(2+)でした。死亡率を下げるには、どうすればよいでしょうか。
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- A4.
- 尿蛋白が陽性の人は、脳卒中、虚血性心疾患など循環器疾患の死亡率が高くなります。糸球体腎炎などの腎疾患に罹患している可能性もあります。血圧が高めであることも、腎疾患と関連があるかもしれません。まず、精密検査を受け、必要に応じて腎疾患の専門医の診察を受けましょう。
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- A4 事例画像はこちらからご覧ください(PDF:134KB)
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〇磯 博康
筑波大学大学院人間総合科学研究科教授
〇佐野 憲一
(財)日立メディカルセンター 健診事業部業務課長 兼 健診技術部検査二課室長
〇古田 恒二
取手北相馬保健医療センター医師会病院 健診科長 兼 検査科長
〇小谷松 毅
(財)茨城県総合健診協会企画課係長
〇高野 千代
大洋村健康増進課 保健師
〇入江 ふじこ
茨城県鉾田保健所長
〇鳥山 佳則
茨城県保健福祉部保健予防課技佐
〇事務局
(茨城県健康科学センター)
〇揚石 広行
副センター長
〇深澤 伸子
調査研究部長
〇塚越 真
調査研究部主任
(筑波大学大学院人間総合科学研究所)
〇野田 博之
脳卒中危険度予測ツール使用の手引きはこちらからダウンロードしてください。(PDF:379KB)