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更新日:2016年5月19日

下水汚泥コンポストの樹林地に対する有効利用に関する研究

研究報告No.18-1(要旨)

研究では、下水汚泥を原料として生産される汚泥コンポストを樹林地に施用した場合の肥料的効果、土壌改良的効果、及びコンポスト施用林地から流出する表面流去水の水質に与える影響について検討した。

1.汚泥コンボストの化学的性

ここではA、B、C3種類のコンポストを使用した。A、Bは高分子凝集剤を使用した脱水汚泥に、Aは粉砕バークを、Bはのこくずを水分調整剤として混入し堆肥化したものである。Cは石灰を凝集剤として用い、水分調整剤を加えないで堆肥化したものである。
pHはCで7.6~7.7と弱アルカリ性を示すのに対し、Aは5.6~6.4、Bは4.3と弱酸性~酸性を示す。全炭素、全窒素は水分調整剤を含むA、Bで高く、Cでは前2者の約3分の1~4分の1である。無機態窒素の場合、一般の堆肥はアンモニア態窒素に比べて、硝酸態窒素含有量の割合が高いことが知られている。しかし、コンポストでは硝酸態窒素が少なくアンモニア態窒素の多いのが特徴である。また牛糞厩肥に比べ数倍~十数倍の重金属類を含み、コンポストを樹林地に施用する場合、この重金属が最大の制限因子になると考えられる。

2.クロマツ海岸林に対する施用効果

クロマツ海岸幼齢林にAを施用した結果、クロマツの生長、林床の草生に対する肥料効果が認められた。肥効の大きさは化成肥料、牛糞厩肥に比べコンポスト施用区で大きかった。跡地土壌の分析結果から、塩基置換容量の増加、各養分濃度の高まりなど、顕著な土壌改良効果が認められた。しかし、コンポスト多量施用区で異常乾燥や虫害が助長された。以上から、海岸クロマツ林に対する施用適量は、10a当たり約2tと判断された。なお多量に施用する場合の施用方法は、今後検討する必要がある。

3.緑化木に対する施用効果

緑化木にBを施用した結果、各緑化木の生長量が増大し、明かに肥料効果が認められた。肥効は化成肥料と同等もしくはそれ以上で、牛糞厩肥よりすぐれ、コンポストの肥効は大きかった。樹種別の生育は、ベニカナメモチは中量区で、マサキ、ケヤキは少量区で最大となり、それ以上はいずれの樹種も低下した。跡地土壌の化学性は窒素、塩基置換容量が増加するものの、施用量の増加にともなうpHの低下、置換性塩基類の溶脱も認められた。重金属類は、表層土の亜鉛含有量が中、多量区、銅が多量区で農耕地土壌の管理基準を越え、明らかに土壌汚染が認められた。以上から各緑化木に対するコンポストの施用適量は、10a当たり2tと判断した。

4.スギ幼齢林に対する施用効果

スギ幼齢林にCを施用した結果、スギの生長量が増大し、肥料効果が認められた。しかし、表層土壌のpHは上昇し、4kg/m2施用した場合、pH7.7と弱リアルカリ性を示した。このことから、Cは肥料としてより、むしろpH矯正用の石灰資材として利用するのが適当と考えられた。この場合の施用量は10a当たり2t程度と判断された。また、コンポストを施用するのに必要な労力は、化成肥料に比べ4.7倍の労力を必要とした。

5.コンポストの施用が林地表面流去水の水質に及ぼす影響

コンポスト施用地から流出する表面流去水を、施用直下で採水した場合には、電気伝導度が上昇し、窒素、リン、カリ、カルシウム、マグネシウムの流出量が顕著に増加した。これらの流出量は施用当年が最も多く、時間の経過とともに減少したが、施用3年後の時点でも対照区より多かった。
一定距離流下後の表面流去水について、5m下方で採水した場合、流出する各成分は大幅に減少する。しかし、その成分は対照区より多く、10m下方の採水で対照区と顕著な差がなくなった。以上から林地にコンポストを施用する場合、少なくとも渓流から10m以上コンポスト無施用の林地を確保する必要がある。
ンポスト林地施用の問題は、浸透水や渓流水への影響、重金属類の土壌中での移動、集積など、森林生態系に及ぼすマイナス要因等を十分解明し、慎重に検討する必要がある。これらの問題が解明されていない現在、コンポストを安易に林地に施用すべきでないことを指摘した。

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