「湖沼水環境の解析:霞ヶ浦を例として」と題した筑波大学大学院福島教授の講演とともに、当センターの事業から、霞ヶ浦の水質、航空機騒音、環境学習に関する調査研究について発表しました。
出席者から多くのご質問・意見があり、活発な質疑応答となりました。
【概要】
同教授は、筑波大学において地球環境の変化に関わる研究、特に水環境の解析とモデリングによる将来予測を環境保全に繋げていくための研究に携わられています。今回の講演では、霞ヶ浦を例とした水質の変化、底質の変化、リモートセンシング手法の活用などについて以下の発表いただきました。
会場からは、石炭灰造粒物の抑制の仕組みや安全性などの質問があり、大変興味のある講演をいただきました。
湖の水質汚濁要因の一つである窒素は、北浦に流入する主な河川において、濃度が平均6 mg/L以上と高いレベルにある。その要因として、堆肥、化学肥料、生活排水などに含まれる窒素が河川に流出していることが考えられる。それらが流入する窒素量のどの程度を占めるのか、明確には分かっていない。当センターでは、窒素成分の起源や生成・消失について、硝酸イオンの窒素や酸素の安定同位体比を基に、流入する窒素の起源解明する研究に取り組み、鉾田川では生活排水、堆肥由来が高い割合を占めている結果を得た。
今後、更に詳細に調査を行い、正確な窒素起源の把握に努めて、負荷削減施策のための提言を行う。
水質の変動要因のうち、 COD、TNやTPの組成として、懸濁成分の割合は、CODとTNで約3割、TPで約7割であることが判明しているが、その由来は不明確である。そこで、当センターの水質観測結果を基に、それら要因の懸濁成分の由来について検討し、有機物由来の懸濁成分としては、CODとTNは7割程度、TPは6割程度であると推測された。
今後もデータを蓄積し、無機態の懸濁物質が水質変動に及ぼす影響等を把握し、水質変動要因解明に活かす。
従来の評価方法のWECPNLは、騒音測定機器の技術的進歩や諸外国の動向に合わせて平成25年度からWECPNLに代わりLdenが施行された。
当センターの百里飛行場の航空機騒音調査では、Ldenに加え、経年変化を把握するために評価方法改正後もWECPNLを測定している。平成25年度から27年度の調査においては、WECPNLとLdenは同様の傾向を示しており、評価方法改正の影響はほとんどなかった。
社会の変化への対応の観点から、学校教育の中での環境教育の実施ならびに子どもたちの環境意識の育成がますます重視されている。しかし、予算、指導者、教材等の問題から、学校内だけで学習を充実させるには困難な状況がある。
そこで、行政・社会教育施設が関わり、環境学習を行うことで子どもたちの環境意識にどのような変化が見られるのかを調べた。当センターの学習に参加した児童・生徒に対して環境学習実施前後にアンケートを行い、分析を行ったところ、霞ヶ浦への親しみをはじめ規範意識、保全意識、環境配慮行動等でいずれも学習後の向上が見られ、当センターでの体験を伴った学習は、環境意識の向上に有効であることが分った。
茨城県霞ケ浦環境科学センター 湖沼環境研究室
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