霞ケ浦環境科学センターでは今年も成果発表会を開催しました。
今回の発表会では、国立環境研究所 今井章雄様から「NIES霞ヶ浦長期モニタリングと底泥環境研究について − 霞ヶ浦底泥で激しい変化が起きている」と題して基調講演をしていただきました。また、当センターで実施している事業の成果として、霞ヶ浦や流域の調査研究、微小粒子状物質(PM2.5)の解析結果、湖上体験スクールの学習効果について発表しました。参加した皆様から熱心な質問が出されました。
国立環境研究所 地域環境研究センター長 今井 章雄 様
今井様は、水環境における溶存有機物の特性、起源、影響に関する研究に携わられています。今回は、国立環境研究所で1977年から実施しているモニタリング調査で得られた水質の長期トレンドについてご発表いただきました。クロロフィルa濃度、COD等の推移はアオコの出現に鈍感であること、アオコが出現すると透明度が高くなること等のご説明がありました。加えて、底泥の間隙水中の栄養塩、溶存有機物の長期トレンドや溶出特性より、2006年頃から底泥の酸化還元環境が変化していることをお示しいただきました。また、新しい測定技術として底泥構造のMRIやCT撮影で、ガス胞の季節変動などの写真をご紹介いただきました。
近年の霞ヶ浦(西浦)は透明度が上昇傾向にあり、これには無機態浮遊物質量の急減と、それに影響を強く受けた有機態浮遊物質量の変化が影響したことがわかりました。また、有機態浮遊物質量の減少には動物プランクトンの増加が影響した可能性も示唆されました。
鉾田川は窒素濃度が上昇傾向にあります。本発表では、その現象の解明に向けた、支流の水質調査や土壌ボーリング調査、地下水調査の結果について報告しました。畑地の土壌や一部の井戸水で高い窒素濃度が観測されました。
霞ヶ浦湖心における過去30年の光量子量と浮遊物質量(SS)から、入射光の減衰寄与率に関する評価をしました。その結果、白濁期(1999年〜2006年)においては無機態浮遊物質が主な減衰要因となり、非生物的な成分による光環境の制限が、植物プランクトンに影響を与えていたことが示されました。
茨城県では秋・冬にPM2.5が高濃度になる傾向がみられます。成分分析の結果から、春・夏は硫黄酸化物、秋・冬は窒素酸化物が反応してPM2.5が生成されていることが示唆されました。また、秋・冬にはバイオマス燃焼の影響もみられました。
霞ヶ浦湖上体験スクールは、平成20年度から平成26年度までに約4万7千人の受講がありました。受講者の約4割の方にとっては、初めて霞ヶ浦に来る機会となっています。実施後の質問紙調査によると、このスクールは霞ヶ浦の水質浄化のための行動を促していることが分かりました。